ウソの国ー詩と宗教(戸田聡stdsts)

キリスト信仰、ポエム、カルト批判など

基督の歌+5:基督像

 
   基督の歌+5:基督像
 
  基督像
 
誰も助けてはくれない
誰にもおろしてもらえない
痩せた項(うなじ)は地にうなだれ
蒼白の瞳はかすかに見開かれながら
ずり下がる手足の痛みに耐えていなければならない
 
どれほど多くの乾いた唇が
彼の名前を掠めていったことだろう
どれほど多くの黄色い視線が
彼を横目に見たことだろう
そして頁をめくるような夥しい粗い舌が
彼を指して唱えたのだ
ユダヤの王」あるいは
「わが救い主」と
 
彼はなぜ耐えているのか
彼は何を待っているのか
それでも扉は開かれている
どこに向かって あるいは誰に
 
 *
 
息を切らして
開かれた扉から
駆け込んできたのは一人の少年である
熱く紅潮した顔が彼を見上げる
少年の汗まみれの手に
握られているのは一冊の聖書だ
 
「主よ 私です
 私は来ました」
 
信仰告白
上気した額の上で
まるで天国を見たかのように
見知らぬ夢に向かって語られていた
少年はまだ信じている
本当は基督よりも自分の元気を
少年はまだ知らない
彼の聖書(テキスト)が答えない
多くの悲劇について
 
 *
 
礼拝堂から街へ
宿命のように降りている階段を
少年も今しがた降りていった
 
人のいない礼拝堂の中で
去っていった少年の面影を
まだ見おろしている
基督像
 
たとえその動かぬ指先に
ふるえる朝の歌がよみがえったとしても
目に見える何が
それを少年に伝えるだろう
 
何も変わってはいない
誰も見送りはしない
くずれ去っていくもの
新たに生まれる何か そして
彼をとどめる絆(きずな)のために
基督の歌が歌われるのは
このときであるから
 
 
私は、家は日蓮宗だったので、教会に行くには、それなりの切っ掛けが必要でした。高校のとき、聖書を無料でもらえるらしいということを聞いて、下宿仲間と一緒に、最初尋ねたのは、カトリックの教会でした。
 
その時、私に同伴していたのは、聖書は聖なる書っていうくらいだから何か良いことが書いてあるんだろう、という先入観。そういう安い切っ掛けだったのです。
 
カトリックの教会は目立つところにあり、大きくて、このポエムの礼拝堂と階段は、その教会のイメージです。不正確かもしれません。基督像は想像で、むしろ心の中のイメージかもしれません。
 
そのカトリックの教会では、ギデオン協会というところで、伝道の一環として聖書を無料でくれるところとがあり、そのためには、プロテスタントの教会のほうに行くように言われて、次に訪ねたのが、日本基督教団のモダンなデザインの小さな教会でした。そこで日英対訳の新約聖書をもらったのが最初で、毎週ではなかったけど、教会に通うようになり、卒業を控えた頃、洗礼を受けました。
 
最初は、讃美歌に惹かれました。そして、その教会の聖書研究会に、ときどき参加しているうちに、孤独からの解放、他者からの解放、などを学んで、結局、洗礼を受けたのは、いっしょに行った下宿仲間の高校生の中で、私だけでした。ちなみに、洗礼は、滴礼でした。
 
ユダヤの王」と言うのは聖書の話。「わが救い主」と言うのは現代の私たちの話です。私たちは、ひょっとすると、讃美するたびに、熱く紅潮して、のぼせ上がって、かえって、背いているのかもしれません。私たちは、信仰に、自分の欲求や夢や願望をくっつけているかもしれません。
 
それらを捨てなければ救われない、というのではありません。それらは、信仰とは別であるが、それでも、それらをくっつけてしまいがちなのが、人間の罪性だという自覚こそが必要だということです。
 
若い頃の信仰も、年取ってからの信仰も、似たようなところはあるでしょうが、後者のほうが、より理屈っぽくなっているかもしれません。
 
最終の4つの段落は、一応、憧れというか、讃美的に書いたつもりです。少年の面影をキリスト像が見下ろしているというのは、訪れた少年が去っても、キリストは、忘れることはないというイメージです。
 
そうして、巷(ちまた)に戻ってゆく少年には、長い長い人生が、そして信仰生活が待っています。去って行った少年は、まだ、自分を信じているところがあるでしょう。少年は、キリストの心を洞察できていませんが、
 
キリストは、少年の心を、既に洞察して、温かい愛と共感の眼差しで、見ておられるのです。
 
おしまい
 
 
(2019年10月15日)
 
基督の歌(序+6篇)は、一応、これで終わりです。
 
 
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